日本メディカルコミュニケーション学会
第3巻 第1号

自立生活運動とピア・カウンセリング
自立生活センターがピア・カウンセリングを大事にする理由

蛭川涼子

NPO 法人自立生活センターSTEP えどがわ

「ピア」とは仲間、同じ背景を持つ人たちという意味をもつ。1970 年代に始まった米国の自立生活運動は日本に も大きな影響を与え、1980 年代には日本の若い障害者たちは、米国まで学びに行き、持ち帰ったのが障害者(ピア) によるカウンセリングであるピア・カウンセリングである。医療的カウンセリングとの大きな違いは、専門家と患者 という構図ではなく、ピア(同じ背景をもつ)同士、お互いが「対等」という点にある。令和3年度の報酬改定で、 一部の障害福祉サービス事業所に適用となるピアサポート加算が新設され、ピアサポーターという役割が注目されて いる。本稿では医療的カウンセリングとの違いに触れつつ、障害領域を超えて様々なピアサポート活動が評価され始 めた現状や、障害者が専門家としてほかの障害者を支えるとはなにか、について解説した。

協働と参画 ―患者・市民にできること―

山口 育子

認定NPO 法人ささえあい医療人権センターCOML

ここ数年、医療を取り巻くさまざまな分野で「患者・市民参画(PPI:Patient & Public Involvement)」が求めら れるようになってきた。最近では一般委員の重要性が高まり、2017 年度から特定機能病院では医療安全監査委員会 の設置が求められ外部委員として医療を受ける立場の者が必要とされている。学会が作成している診療ガイドライン でも、作成段階から一般の人の意見を採り入れることが推奨されている。COML では、2017 年度から「医療関係会 議の一般委員養成講座」を開催し、合否判定をして合格者は「COML 委員バンク」に登録可能としている。現在、 COML 委員バンクに登録しているメンバーは19 名になり、さまざまな委員派遣要請や、患者・市民として意見を求 められる場への派遣など、政策提言を主としたPPI の幅を広げている。医療における幅広いPPI の実現のためには、 深く医療にかかわり協働できる患者・市民の育成が不可欠であり、本稿本講演ではCOML で実践してきた活動をご 紹介する。

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